連載「量子ノート」第19回(非技術者でも理解できる量子技術)
量子コンピュータの量子ビットは、いったい何で作られているのでしょうか?超伝導、イオントラップ、中性原子、光、シリコンの五つの方式が競い合い、決着はまだついていません。
- 量子ビットの作り方には、超伝導など主に五つの方式があり、今も競い合っています。
- 超伝導方式は大規模化で先行していますが、大がかりな冷却装置が欠かせません。
- イオントラップや中性原子、光、シリコンの各方式にも、それぞれ異なる長所があります。
- どの方式にも長所と課題があり、どれが主流になるかはまだ分かりません。
執筆:弁護士・弁理士 内田誠(iCraft法律事務所)/執筆時点:令和8年9月
量子ビットの「素材」はいろいろ
普通のコンピュータは、ほとんどがシリコンの半導体でできています。ところが量子コンピュータでは、量子ビットを何で作るかについて、今もいくつもの方式が競い合っています。主なものは、超伝導、イオントラップ、中性原子、光、シリコン(半導体)の五つです。
超伝導方式
電気抵抗がゼロになる「超伝導」の電子回路を、絶対零度近くまで冷やして量子ビットとして使う方式です。1999年に、NECの中村泰信氏らが、この種の回路で量子の状態を思いどおりに操ることに初めて成功しました。
回路の設計の自由度が高く、たくさんの量子ビットを一つのチップに集めやすいことから、大規模化で先行してきました。IBMやGoogleが開発を進めているほか、日本でも2023年に、理化学研究所と富士通などのチームが64量子ビットの国産機を公開しています。一方で、大がかりな冷却装置が欠かせません。
イオントラップ方式と中性原子方式
イオントラップ方式は、電気を帯びた原子(イオン)を真空中に電場で浮かべ、レーザーなどで操作する方式です。量子の状態を長く保てることと、操作のエラーが少ないことが長所です。
中性原子方式は、電気を帯びていない原子を、レーザー光で作った「光ピンセット」で一つずつ捕まえて並べる方式です。状態を長く保てるうえ、数を増やしやすいとされ、1000個を超える原子を並べた装置も発表されています。ただし、並べられる数だけでなく、多くの量子ビットをまとめて操作するときの精度も重要です。
光方式
光の粒(光子)や光の波の状態を使って量子の情報を表す方式です。光を伝えたり一部の計算をしたりする部分は、室温や大気中で動作させられる可能性があり、装置を小さくできると期待されています。ただし、方式によっては光を検出する装置などに冷却が必要な場合もあります。カナダのXanadu社などが開発を進めているほか、日本でも理化学研究所などがこの方式の研究に取り組んでいます。
シリコン(半導体)方式
シリコンなどの半導体の中に電子を閉じ込め、その電子の性質を量子ビットとして使う方式です。これまでの半導体の製造技術を生かせるため、量子ビットを小さく、たくさん集積できる可能性があります。アメリカのIntelのほか、日本でも日立製作所や理化学研究所が研究を進めています。
決着はまだついていない
どの方式にも長所と課題があり、どれが最終的な主流になるかはまだ分かりません。日本政府のムーンショット型研究開発制度では、2050年までに、誤りを訂正しながら計算できる大規模な量子コンピュータを実現することを目標に掲げています。方式ごとの特徴を押さえておけば、発表される成果がどの方式のどんな前進なのかを読み解く手がかりになります。
よくある質問
- 日本ではどの方式の研究が進んでいますか?
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超伝導方式では2023年に理化学研究所と富士通などのチームが64量子ビットの国産機を公開しています。光方式では理化学研究所など、シリコン方式では日立製作所や理化学研究所が研究を進めています。
- 光方式の量子コンピュータは冷却が不要なのですか?
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光を伝えたり一部の計算をしたりする部分は、室温や大気中で動作させられる可能性があります。ただし、方式によっては光を検出する装置などに冷却が必要な場合もあります。
- 量子ビットの数が多い方式ほど優れているのですか?
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数だけでは判断できません。並べられる数だけでなく、多くの量子ビットをまとめて操作するときの精度も重要です。
まとめ
- 量子ビットの作り方には、超伝導など主に五つの方式があり、今も競い合っています。
- 超伝導方式は大規模化で先行していますが、大がかりな冷却装置が欠かせません。
- イオントラップや中性原子、光、シリコンの各方式にも、それぞれ異なる長所があります。
- どの方式にも長所と課題があり、どれが主流になるかはまだ分かりません。
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本記事は、量子技術に関わる業務に携わっている弁護士である筆者が、大学時代の教科書や論文などを読み直し、自分なりの理解をまとめたものです。量子技術の専門家の方からご覧になると、不正確な点があるかもしれませんが、その点はどうかご容赦ください。
更新履歴:令和8年10月 公開(noteで公開した連載を改訂して掲載)
