量子とは?エネルギーの「ひとかたまり」の単位をやさしく解説

量子とは?エネルギーの「ひとかたまり」の単位をやさしく解説(法務ラボ|iCraft法律事務所)

連載「量子ノート」第11回(非技術者でも理解できる量子技術)

量子という言葉から、特別な小さい粒を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。量子とは粒の名前ではなく、量が決まった大きさのひとかたまりでやり取りされるときの単位を指す言葉です。

この記事の要点
  • 量子は粒の名前ではなく、量がやり取りされるときの「ひとかたまり」の単位です。
  • 1900年にプランクが、光のエネルギーはひとかたまりの整数倍でやり取りされると考えました。
  • ボーアは、原子の中の電子がとびとびのエネルギーしか持てないという考えを示しました。
  • この「とびとび」の性質は、原子時計や量子コンピュータを支えています。

執筆:弁護士・弁理士 内田誠(iCraft法律事務所)/執筆時点:令和8年9月

目次

「量子」は粒の名前ではない

量子という言葉を聞くと、何か特別な小さい粒を思い浮かべるかもしれません。しかし、量子はもともと、ある量が決まった大きさの「ひとかたまり」を単位としてやり取りされるとき、その単位を指す言葉です。

身近なたとえはお金です。現金での買い物では1円が最小の単位で、0.5円だけを支払うことはできず、支払う金額は必ず1円の整数倍になります。

ミクロの世界では、これと似た「刻み」が現れる場合があることが分かったのです。例えば、決まった色(振動数)の光のエネルギーや、原子の中に閉じ込められた電子のエネルギーです。ただし、どんなエネルギーにも共通する最小の刻みがあるわけではありません。

始まりは熱い物体が出す光

きっかけは19世紀末の難問でした。熱した物体が出す光の色の分布を、当時の物理学ではうまく説明できなかったのです。1900年、ドイツの物理学者プランクは、実験とよく合う式を見つけました。その理由として、プランクは「光のエネルギーは、振動数に比例したひとかたまりの整数倍でしかやり取りされない」という大胆な仮説にたどり着きました。

1905年には、アインシュタインがこの考えをさらに進めます。光を浴びた金属の表面から電子が飛び出してくる「光電効果」では、飛び出す電子のエネルギーの最大値が、光の強さではなく光の振動数(色)によって決まります。アインシュタインは、光そのものが決まった量のエネルギーを持つ粒(光子)の集まりだと考えることで、この不思議な性質を説明しました。

原子の中も「とびとび」

1913年には、デンマークの物理学者ボーアが、原子の中の電子も、とびとびのエネルギーしか持てないという考えを示しました。

原子の中の電子は、なだらかな坂道ではなく階段の上にいるようなものです。電子は段と段の間には止まれず、ある段から下の段へ飛び移るときに、段差の分のエネルギーを光として放ちます。段差の大きさは原子の種類ごとに決まっているため、段と段の間を移るときには、原子は決まった波長の光を出します。例えば水素原子では、一番下の段とその一つ上の段の差にあたる光は、波長が約122ナノメートルの紫外線です。

量子技術の土台として

この「とびとび」の性質は、今の量子技術を支えています。原子時計は、原子の段差にあたる光や電波の振動数が常に同じであることを利用して、時間を正確に刻んでいます。また、イオンなどを使う量子コンピュータでは、エネルギーの段のうち二つを0と1に見立てて量子ビットとして使います。量子技術の「量子」という言葉は、すべてここから始まっているのです。

よくある質問

量子とは小さな粒のことですか?

いいえ。量子は、ある量が決まった大きさの「ひとかたまり」を単位としてやり取りされるとき、その単位を指す言葉です。

どんなエネルギーにも最小の刻みがあるのですか?

いいえ。決まった色の光のエネルギーや原子の中の電子のエネルギーのように刻みが現れる場合がありますが、どんなエネルギーにも共通する最小の刻みがあるわけではありません。

量子の考え方は今の技術とどう関係していますか?

原子時計は、原子の段差にあたる光や電波の振動数が常に同じであることを利用しています。また、イオンなどを使う量子コンピュータでは、エネルギーの段のうち二つを0と1に見立てて量子ビットとして使います。

まとめ

  • 量子は粒の名前ではなく、量がやり取りされるときの「ひとかたまり」の単位です。
  • 1900年にプランクが、光のエネルギーはひとかたまりの整数倍でやり取りされると考えました。
  • ボーアは、原子の中の電子がとびとびのエネルギーしか持てないという考えを示しました。
  • この「とびとび」の性質は、原子時計や量子コンピュータを支えています。

量子技術に関わる共同研究開発契約・ライセンス契約、特許による技術の保護、外為法規制対応など、具体的な事案については弁護士にご相談ください。iCraft法律事務所でもご相談をお受けしています。

連載「量子ノート」


本記事は、量子技術に関わる業務に携わっている弁護士である筆者が、大学時代の教科書や論文などを読み直し、自分なりの理解をまとめたものです。量子技術の専門家の方からご覧になると、不正確な点があるかもしれませんが、その点はどうかご容赦ください。

更新履歴:令和8年10月 公開(noteで公開した連載を改訂して掲載)

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この記事を書いた人

弁護士・弁理士(iCraft法律事務所)。京都大学工学部物理工学科卒業。生成AI・データ利活用・システム開発・知的財産、量子技術・宇宙・メタバース等のディープテック分野の法律問題を専門的に取り扱う。経済産業省「AI・データ契約ガイドライン検討会」作業部会委員、日本弁護士連合会「AI戦略ワーキンググループ」委員、日本弁理士会特許委員会副委員長などを歴任。

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