連載「量子ノート」第12回(非技術者でも理解できる量子技術)
粒と波はまったく別のものなのに、光や電子が両方の性質を持つとはどういうことでしょうか。光や電子は、移動するときは波のように広がり、見つかるときは粒として一点に現れるのです。
- 光や電子が粒と波の両方の性質を示すことを「波と粒子の二重性」といいます。
- 光電効果は、光を粒(光子)と考えることで説明されました。
- ド・ブロイが予言した電子の波の性質は、1927年の実験で確かめられました。
- 野球のボールの波長は桁違いに短く、波らしさを感じ取ることはできません。
執筆:弁護士・弁理士 内田誠(iCraft法律事務所)/執筆時点:令和8年9月
粒と波は正反対の性質
私たちの感覚では、「粒」と「波」はまったく別のものです。粒は、ある瞬間に一か所に存在し、何かにぶつかると一つの点に当たります。一方の波は、水面の波紋のように空間に広がり、二つの波が出会うと強め合ったり打ち消し合ったりします。この強め合いと打ち消し合いを「干渉」といいます。
ところが、光や電子は、この正反対の性質を両方とも示します。これを「波と粒子の二重性」といいます。
光は粒でもあった
光が波であることは、ヤングの二重スリット実験に代表される干渉の現象から、古くから知られていました。ところが20世紀の初めになると、光を粒と考えなければ説明できない現象が見つかります。
光で照らした金属から電子が飛び出す現象、つまり光電効果はその代表です。アインシュタインは、光が決まった量のエネルギーを持つ粒(光子)として振る舞うと考えて、光電効果を説明しました。さらに、光の粒が物にぶつかるとき、ビリヤードの球のように勢い(運動量)を受け渡すことも確かめられました。
電子は波でもあった
逆向きの発想をしたのが、フランスの物理学者ド・ブロイです。1920年代の前半、ド・ブロイは「光が粒の性質を持つなら、電子のような粒も波の性質を持つのではないか」と考えました。そして、粒の勢いが大きいほど波長が短くなるという関係を示しました。
この予言は、1927年にデビッソンとガーマーの実験で確かめられます。電子の流れを結晶に当てると、波が干渉したときと同じように、特定の方向にだけ強く跳ね返ったのです。100ボルト程度の電圧で加速した電子の波長は約0.12ナノメートルで、結晶の中の原子の間隔と同じくらいの長さです。
なぜボールは波に見えないのか
それなら、身の回りの物も波の性質を持つはずです。実際に計算すると、時速144キロメートル(秒速40メートル)で飛ぶ重さ145グラムの野球のボールの波長は、およそ10のマイナス34乗メートルです。小数点の後に0が33個も並んでから、ようやく1が現れるほどの短さです。
原子の大きさと比べても桁違いに小さく、波らしさを感じ取ることはできません。さらに、大きな物は周りの空気や光と絶えずやり取りしているため、干渉のような波の性質を保つこと自体が難しくなります。
たとえるなら、小さな粒は、移動するときは波のように広がり、見つかるときは粒として一点に現れます。正確には、粒がどこで見つかるかの確率を決めるものが波のように広がって干渉し、検出は一つひとつの点として記録される、ということです。この二重性こそ、重ね合わせや干渉といった量子の不思議な性質の出発点なのです。
よくある質問
- 電子が波の性質を持つことはどうやって確かめられたのですか?
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1927年のデビッソンとガーマーの実験で、電子の流れを結晶に当てると、波が干渉したときと同じように特定の方向にだけ強く跳ね返ることが確かめられました。
- 身の回りの物も波の性質を持つのに、なぜ波に見えないのですか?
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野球のボールの波長はおよそ10のマイナス34乗メートルと、原子の大きさと比べても桁違いに小さいからです。さらに、大きな物は周りの空気や光と絶えずやり取りしているため、干渉のような波の性質を保つこと自体が難しくなります。
- 波のように広がるのは粒そのものですか?
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正確には、粒がどこで見つかるかの確率を決めるものが波のように広がって干渉し、検出は一つひとつの点として記録されます。
まとめ
- 光や電子が粒と波の両方の性質を示すことを「波と粒子の二重性」といいます。
- 光電効果は、光を粒(光子)と考えることで説明されました。
- ド・ブロイが予言した電子の波の性質は、1927年の実験で確かめられました。
- 野球のボールの波長は桁違いに短く、波らしさを感じ取ることはできません。
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本記事は、量子技術に関わる業務に携わっている弁護士である筆者が、大学時代の教科書や論文などを読み直し、自分なりの理解をまとめたものです。量子技術の専門家の方からご覧になると、不正確な点があるかもしれませんが、その点はどうかご容赦ください。
更新履歴:令和8年10月 公開(noteで公開した連載を改訂して掲載)
