量子ゲートと量子回路とは?量子コンピュータの計算手順をやさしく解説

量子ゲートと量子回路とは?量子コンピュータの計算手順をやさしく解説(法務ラボ|iCraft法律事務所)

連載「量子ノート」第7回(非技術者でも理解できる量子技術)

量子コンピュータは、どのような手順で計算を進めているのでしょうか。量子ビットへの基本操作である「量子ゲート」を順番に並べた「量子回路」で計算します。

この記事の要点
  • 量子ビットに対する基本的な操作を量子ゲート、それを順番に並べた計算の手順を量子回路といいます。
  • アダマールゲートで重ね合わせを作り、CNOTゲートと組み合わせると量子もつれを作れます。
  • 理想的な量子ゲートは、逆向きの操作を加えれば元の状態に戻せる操作です。
  • 重ね合わせ、もつれ、干渉をうまく使えるよう量子回路を設計する考え方が量子アルゴリズムです。

執筆:弁護士・弁理士 内田誠(iCraft法律事務所)/執筆時点:令和8年9月

目次

計算は「ゲート」の組合せ

私たちが使うコンピュータの内部では、「論理ゲート」と呼ばれる小さな回路が、0と1を使った計算をしています。二つの入力が両方とも1のときだけ1を出す「AND」や、入力を反転させる「NOT」などです。どんなに複雑な計算も、こうした単純なゲートを膨大に組み合わせて実現されています。

量子コンピュータも、基本的な考え方は同じです。量子ビットに対して行う基本的な操作を「量子ゲート」といい、量子ゲートを順番に並べた計算の手順を「量子回路」といいます。量子回路は、左から右へ時間が流れる楽譜のような図で表されることが多く、横線の一本一本が量子ビットを、線の上に置かれた記号がゲートを表します。

代表的な二つの量子ゲート

一つ目は「アダマールゲート」です。0の状態の量子ビットにこのゲートを使うと、0と1が半々の重ね合わせになります。量子の計算の多くは、このゲートで重ね合わせを作るところから始まります。

二つ目は「CNOT(制御NOT)ゲート」です。二つの量子ビットに使うゲートで、一方の量子ビット(制御ビット)が1のときだけ、もう一方を反転させます。

例えば、二つの量子ビットをどちらも0にそろえてから、片方にアダマールゲートを使って重ね合わせにします。その量子ビットを制御ビットにしてCNOTゲートを使うと、二つの量子ビットは「両方0」と「両方1」を同じ重みで重ね合わせた、もつれた状態になります。つまり、この二つのゲートを組み合わせるだけで、量子もつれを作り出せるのです。

回転としての量子ゲート

1つの量子ビットにはたらく量子ゲートは、量子ビットの状態を回転させる操作と考えることもできます。量子ビットの状態を地球儀の上の点で表すと、量子ゲートはその点をさまざまな軸の周りに回す操作にあたります。

従来の論理ゲートとの大きな違いは、理想的な量子ゲートが元に戻せる操作だという点です。ANDゲートでは、出力が0だった場合、入力が00・01・10のどれだったのかは分かりません。一方、量子ゲートは逆向きの操作を加えれば元の状態に戻せます。ただし、測定したり、周りの環境に情報が漏れたりした後は、一般に、量子ビットだけを操作して測定前の未知の状態を確実に取り戻すことはできません。

実際の装置では、量子ビットにマイクロ波やレーザー光を正確なタイミングと強さで当てることで、量子ゲートを実行しています。

量子回路を設計する

量子コンピュータで問題を解くには、重ね合わせ、もつれ、干渉をうまく使えるように量子ゲートを並べた量子回路を設計する必要があります。この設計の考え方が「量子アルゴリズム」です。現在では、インターネットを通じて量子コンピュータを利用できるサービスもあり、一般の人でも量子回路を組んで実機で動かすことができます。量子ゲートと量子回路は、量子コンピュータを「使う」ための基本となる考え方です。

よくある質問

量子ゲートは従来の論理ゲートとどこが違うのですか?

大きな違いは、理想的な量子ゲートが元に戻せる操作だという点です。ANDゲートでは出力から入力を特定できませんが、量子ゲートは逆向きの操作を加えれば元の状態に戻せます。

量子ゲートは実際の装置でどのように実行されるのですか?

量子ビットにマイクロ波やレーザー光を、正確なタイミングと強さで当てることで実行しています。

一般の人でも量子回路を動かせますか?

はい。インターネットを通じて量子コンピュータを利用できるサービスがあり、一般の人でも量子回路を組んで実機で動かすことができます。

まとめ

  • 量子ビットに対する基本的な操作を量子ゲート、それを順番に並べた計算の手順を量子回路といいます。
  • アダマールゲートで重ね合わせを作り、CNOTゲートと組み合わせると量子もつれを作れます。
  • 理想的な量子ゲートは、逆向きの操作を加えれば元の状態に戻せる操作です。
  • 重ね合わせ、もつれ、干渉をうまく使えるよう量子回路を設計する考え方が量子アルゴリズムです。

量子技術に関わる共同研究開発契約・ライセンス契約、特許による技術の保護、外為法規制対応など、具体的な事案については弁護士にご相談ください。iCraft法律事務所でもご相談をお受けしています。

連載「量子ノート」


本記事は、量子技術に関わる業務に携わっている弁護士である筆者が、大学時代の教科書や論文などを読み直し、自分なりの理解をまとめたものです。量子技術の専門家の方からご覧になると、不正確な点があるかもしれませんが、その点はどうかご容赦ください。

更新履歴:令和8年10月 公開(noteで公開した連載を改訂して掲載)

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この記事を書いた人

弁護士・弁理士(iCraft法律事務所)。京都大学工学部物理工学科卒業。生成AI・データ利活用・システム開発・知的財産、量子技術・宇宙・メタバース等のディープテック分野の法律問題を専門的に取り扱う。経済産業省「AI・データ契約ガイドライン検討会」作業部会委員、日本弁護士連合会「AI戦略ワーキンググループ」委員、日本弁理士会特許委員会副委員長などを歴任。

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